「すごくカッコ良くて、立派な人に…」

運の良さの一つが、友人たちが良いアルバイトを紹介してくれたことだった。大学生の頃は、アルバイト代の良い建設会社で働いたり、イベント会場でソロで歌ったり、写真を学んでいたので撮影を頼まれてバンドのコンサートツアーについて行くなどしていた。

ある日、母が「ロックバンドらしいけど、お兄ちゃんが『すごくカッコ良くて、立派な人に会った』と興奮して話していたよ」と私に伝えた。

母によると、バンドのメンバーは遊びに行ってしまい楽屋にいないのに、ひとりだけ楽屋に残り、ギターを弾き、なにか書いたり、歌ったりしている人がいたそうだ。

兄も行くところがないから座っていた。するとその人が、兄のところに来て、「兄ちゃん、カメラマンになりたいのかい?」と話しかけた。兄は「なりたいです」と答えた。

(写真:stock.adobe.com)

するとその人は、「じゃあ、いい写真を撮らしてやるよ」と言うと、鏡に向かい、カッコ良く髪をかき上げ、いろいろなポーズを取り、写真を撮らせてくれたそうである。その写真はどこかに使われるらしいと母は言っていた。

後日、母は兄に再度その人の名前を聞き、メモをして私に見せた。「キャロルの矢沢永吉」と書いてあった。ファンの方々には怒られそうだが、母も私も当時、ロックバンドとなると全く知らなかった。