政界に戻る気などまったくありません

今でもインターホンが鳴ると、連日メディアにマンションを取り囲まれた恐怖がフラッシュバックし、家族一同、一瞬ビクッと固まってしまうのですが、事件当時に比べれば、平穏な暮らしを取り戻しつつあります。

議員だった頃は国会と地元に張り付いていて、子どもたちとふれ合える時間が本当に限られていました。今はとにかく子どもの話をゆっくり聞き、たくさんスキンシップをして、ようやく母親らしいことができるようになったと実感しています。最近はママ友ともよくお話しできるようになり、先日娘の友達を家にお招きできました。

復活を目指していると囁かれることもあるようなのですが、私にはもはや何の欲もないですし、もちろん政界に戻る気などまったくありません。

なんとか人の役に立ちたいと、小さい頃から走り続けてきましたが、結果として、大事なことをなおざりにしていたことにも気づかされました。地元でずっと「お母さん」と呼んでお慕いしている方が、「あなたは今も生かされています。これからは、ご家族のため、歯を食いしばって強く生きてください。料理洗濯掃除など、つまらないように見えてもとても大事なことです。心を込めて打ち込んでください」とメッセージをくださいました。今は、その意味がよくわかります。

私の母は、どんなことがあっても、どれほど体がつらくても、一日も欠かさず、朝早く起きてお弁当を作ってくれました。愛情表現が下手な母ですが、私たち姉妹は母の愛を疑ったことがありません。父はすごく厳しい人で、話をするときは今も緊張しますが、寝相のわるい私を心配して、いつも夜中に布団をかけ直しにきてくれていたことを、子どもの私はちゃんと知っていて、うれしかったものです。

自分の子どもには、「努力は報われる」と伝えたかったのですが、私は日本中から全否定された人間です。「たとえ一所懸命頑張ったところで、こんなふうに全部崩れてしまうのだったら、努力する意味なんてないじゃないか」と、子どもは心のどこかで思っているのではないか、と悩んでいました。

それが今回、大きな失敗をしてどん底でとことん反省し、自らを見直したうえで、新型コロナウイルス対策について発信する役割をいただいたことで、「努力は無駄にならないから、頑張ろうね」と、今一度、子どもに言える気がします。

私は、3年前、多くのものを失いました。けれど、私という人間と付き合ってくれていた人たちは、決して失いませんでした。そうした人たちに励まされて、どん底の日々を、どうにか生きてこられました。だから私も、必要とされ役に立つ存在でありたいと強く願っています。


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