次のマンチェスターには一週間いた。

ここに、パフォーマンスするために集まったのが、ドイツやアメリカや日本に在住の日系のダンサー、アーティスト、ミュージシャン、そして詩人である。そのひとりが長女のカノコだったが、その話はまた今度。今あたしはインド料理の話をしたい。

マンチェスターにはカレーマイルという、インド料理店の並ぶ通りがある。十五年前に夫と二人で来て、ヴィンダルーを食べた。

イギリス人の夫の、最後のイギリス旅行だった。ロンドンからレンタカーで彼の娘の家に行き(父娘が会ったのはそれが最後)、そこからマンチェスターの空港に行って、アメリカに戻る予定だった。

ヴィンダルーとは、南インドの、まあ、カレー的な料理の一種だ。アメリカのインド料理屋で注文すると、辛さの程度を聞かれる。そのたびに夫は「ヴィンダルーは辛いのだ。だからアメリカのインド料理屋は……」とため息をついた。元気だった頃の夫は、料理本を見て自分で作った(めっちゃ手間がかかった)。カノコたちがアメリカに行って最初に食べた食べ物は、夫の作ったラムのヴィンダルー。あんなに辛いものを、日本の子どもがよく食べたと思う。

イギリスでほんとのヴィンダルーを食べたいというのも、あの最後の旅の目的のひとつだった。夫はもうほとんど歩けなかった。運転もできなかった。アメリカで重宝していた障害者ステッカーはイギリスでは無効だったから、あたしは目的地からいちばん近いところに駐車することを必死で考えていた。そしてそのとき、夫が行きたいと言ってたレストランの真ん前に、駐車スペースを見つけた。ものすごくラッキーだった。