雪が降りしきる中、半袖のナースウエアの看護師さん

父のかかりつけの病院は、老人ホームから車で15分程の距離のところにある。ラジオの本番前に病院に問い合わせると、診療は6時迄とのことだ。夕方までやってくれているのはありがたい。

しかし検査があるため5時迄には受付を済ませてほしいと言われた。予定通り4時に仕事を終えてホームに寄って父を乗せて走れば、ぎりぎり5時に間に合う計算になる。

老人ホームに、夕方診察を受けられることになったと報告した上で、父の居室迄行って身繕いをする時間はないため、4時半頃に父をロビーに待機させておいてほしいとお願いした。

仕事を終えてすぐに外に出たが、横殴りに雪が降っている。12月初旬に吹雪くことは札幌では珍しい。加えて夕方から気温が急低下することによって、路面がスケートリンクのようにツルツルになり、道路は渋滞が起き始めている。

ワイパーを最速で動かしても前が見えにくい程の雪の中、車をスタートさせた。案の定道路は滑り、みんな低速で走っている。それでも予定より10分弱の遅れでホームに着くことができた。

玄関の前に車を横付けして、父を迎えに老人ホームの中に入ると、父はコートを着て帽子を被って車椅子に座っていた。付き添ってくれている介護士さんと看護師さんにお礼を言ってから、父の前にしゃがんで手を握った。

「すぐに来られなくてごめんね。雪が降っているけど病院に行くよ」

熱のせいか父は反応が鈍く、小さくうなずくだけだった。看護師さんは経口補水液と、発熱後の経過を書いたメモを、袋に入れて渡してくれた。

車椅子を押す介護士さんと共に看護師さんも一緒に外に出ると、吹雪がさらにひどくなっている。父は驚いて声を上げた。

「こんなにひどい雪だったのか。今日は病院に行くのをやめよう。俺は明日でいい」

看護師さんは父に、

「熱を下げる薬をもらえば安心ですから、病院に行きましょうね」

と言ってなだめてくれた。父は看護師さんが半袖の制服を着ていることに気づいて聞いた。

「半袖で、あなたは寒くないの? 風邪引くぞ。中に入った方がいい」

「大丈夫ですよ。慣れていますから」と看護師さんが答えてくれている間に、介護士さんは父を抱えるようにして車に乗せてくれた。

私は知っている。その看護師さんのことを父はとっても気に入っていることを。

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