忘れられないタイの旅
私が自分の“成長”を初めて実感したひとり旅は、20代で行ったタイ旅行でした。タイ国境地帯の山岳地帯で生まれた少数民族の少女たちの就学支援ボランティア団体が主宰するスタディ・ツアーというちょっと変わり種の旅で、当時、その団体に少ないながらも毎月寄付をしていた私は、ニュースレターでツアーの開催を知り、気楽な物見遊山気分で参加することにしました。
ツアーなのであくまで団体旅行です。だから、厳密にはひとり旅とはいえませんが、同行者は初めて会う人ばかり。見知らぬ人と会話できないことはないけれども、すぐに胸襟を開いて打ち解けられるほどコミュニケーション強者ではない私にとっては気おくれすることばかりでした。気持ち的にはひとり旅と変わりません。
また、行き先はかつてゴールデン・トライアングルと呼ばれた国境地域です。タイ、ラオス、ミャンマーの三国が国境を接する自然豊かな地域ですが、当時は麻薬密造が盛んな危険地帯としても有名でした。まだまだ旅行者としてわかばマーク付きだった私としては緊張の連続。
さらに宿泊先はホテルではありません。
少女たちが学校に通うために住んでいる寮の中にある一棟を借りたのですが、これがなんと竹や木で組まれた高床式住居でした。もちろん個室などなく、5~6人での雑魚寝です。さらに、お手洗いは手動水洗……つまり用を足した後、備え付けられた水瓶から手桶で水を汲んで流すタイプ。お風呂はなく、コンクリートの壁に囲まれた簡素な水浴び場でさっと汗を流すだけ。おまけに食事はベジタリアンメニュー(卵だけはOKでしたが)という、なかなかハードな環境でした。
1週間弱滞在する予定でしたが、到着直後は最後まで耐えられるかしら……と不安になったものでした。が、意外や意外、不安はまったくの杞憂に終わりました。私は、自分でも知らなかった驚異の環境適応力を見せて、あっという間に馴染んでしまったのです。人にも、環境にも。
もちろん、そうできたのは私ひとりの力ではありません。同行者が良い方ばかりで、比較的年齢が近い人が複数いたことも心の距離を縮めるのに役立ちました。現地で暮らす少女たちはみな人懐っこく、終始明るく元気な笑顔を見せてくれました。