私は25歳で結婚して、長女、長男、次女、次男と4人の子どもに恵まれ、30代から40代にかけては仕事と子育てに追われていました。
そんななか、長男を妊娠していた時期に、旅で訪れた村で古民家の解体が行われており、100年以上も頑張ってきた木材があっさりと葬られてしまう現場に遭遇したのです。心が痛んで、気づいたら廃材を譲り受けていました。
一体、どうしよう? と考えて閃(ひらめ)いたのが、箱根に土地を買って家を建てることだったのです。12軒の古民家から廃材を譲り受け、職人さんたちと相談しながら作り始めたものの、これで完成だといえるまでに20年もかかってしまいました。
家を建て始めた当時、私たち家族は都内で暮らしていたのですが、子どもたちを大自然のなかで育てたいと一家で箱根に移住。私はオフィスにしていた東京のマンションと箱根を行ったり来たりする生活になりました。あの頃は若かったなぁとつくづく思います。
やがて夫は長距離通勤に耐えかねて、週末だけ箱根で過ごすようになりましたが、私はそういうわけにはいきません。子どもたちの食事を作り、身の回りの世話をしながら精神的に支えることは母親である私の役目だと思っていましたから。仕事が終わると自分で車を運転して、一目散に箱根の家に帰ったものです。
思春期になった子どもたちと向き合うのが大変な時期もありました。女優の仕事もキャリアを積めば積むほど、責任が重くなっていく。背負うものが多くて、どうにかしなければと考えた末に、40代で女優は卒業しようと決めたのです。
未練はなかったと言ったら嘘になります。続けたほうがいいと引き留めてくださる方もいましたが、家庭を作るという選択をした以上、生活のバランスを整える必要がありました。
精神的にも時間的にもゆとりのある暮らしをして、いつも笑顔でいるためにはこれしかないと、きちんと納得したうえでの決断だったのです。