ふたつの効果

「なんでてめえの親父は家に金入れてこねえんだ。バカ野郎だな。あああっ! にんじんのポークソテー食いてえな!」

「こんな散らかしやがって掃除めんどくせえなあほんとに。あああっ! にんじんのポークソテー食いてえな!」

鈴木もぐら
鈴木もぐら「私が飯をうまく食うことに執着があるのは、こんな母親の血が流れてるからだと思います」(写真:『没頭飯』より)

怒ることとポークソテーがセットになってる。これにはきっとふたつの効果があったんじゃないかと思うんです。

ひとつは、鼻から息が漏れるほどおいしいにんじんのポークソテーを思い出すことによって、自分自身の怒りを抑える効果。もうひとつは、「にんじんのポークソテー食いてえな!」って口に出すことによって、次に食べるポークソテーをよりうまく感じるようにする効果です。イライラしたり怒ったりしたら「なになに食いてえな」って食いたいものをあえてセットで言うことによって、それが食えたときの喜びをものすごく上げてる。

実際、次にグリルにんじんに行ってポークソテーを食べるとめっちゃうまく感じるんですよ。不思議なことに。毎回最高を更新する。それは母親の「あああっ! にんじんのポークソテー食いてえな!」を何度も何度も聞いてるから、私の脳にも「最大のご褒美」として刷り込まれちゃってるんです。