「怒り」は最大の調味料
「空腹は最大の調味料」みたいな言葉がありますよね。母親の場合は「空腹」じゃなくて「怒り」が最大の調味料だったんです、きっと。でも母親はそれを意図してやってたんじゃなくて本能でやってた。本能で飯をよりうまく食うためにやってたんです。
約1か月間、怒りでうまさのボルテージをあげていく。ボルテージがパンパンになった状態で、満を持してにんじんのポークソテーを食べに行く。そして、「やっぱりにんじんのポークソテーは最高にうめえな」って心から言うんです。「人間は飯を食うために生きてんだな」ともよく言ってました。
店を出たあとも「うまかったなあ。うまかったなあ」ってずっと言ってました。見るからに機嫌がよくなってる。でも次の日から怒ったらまた「あああっ! にんじんのポークソテー食いてえな!」っていうループが始まります。
私が飯をうまく食うことに執着があるのは、こんな母親の血が流れてるからだと思います。
※本稿は、『没頭飯』(ポプラ社)の一部を再編集したものです。
『没頭飯』(著:鈴木もぐら/ポプラ社)
飯を語ることは、己を語ること――。
空気階段・鈴木もぐら、「食」を通して自身を語る初の単著。




