右近 父の延寿太夫が出演している歌舞伎の生の舞台を「観に行きたい」ってついて行くと、芝居より踊りのほうがわかりやすいし、色彩がきれいだったんです。
とくに憶えているのが『吉野山』。静御前と狐忠信の道行きなのですが、なぜか花四天(はなよてん)の印象がとても強かった。この人たちは身体を使ってこんなすごいことをするんだ、って。
その時の忠信が天王寺屋さん(中村富十郎)で、静が京屋のおじさん(四代目中村雀右衛門)でしたけど、5歳やそこらの子どもがそれを観て、やっぱりこれをやりたい、って思って真似してました。
篠井 清元の真似は?
右近 それもしていました。でも清元の家の子どもが清元の真似をしていても、別に当たり前の話なので。それが役者のほうの真似をしてるので、じゃあちょっと舞台に出してみようか、ということになった。それが7歳、岡村研佑の初舞台です。
大人たちはちょっと面白半分のつもりが、子どもがいきなり本気出したんでびっくりして、困って。想定外のことだったようです。(笑)
篠井 その時の演(だ)し物は?
右近 『舞鶴雪月花(ぶかくせつげっか)』で、松虫の踊りでした。親たちにしてみれば子どもの思い出作りのはずが、自分は本気のデビューだと思い込んでいて……。今さらそれは勘違いだと言えない大人たちのことを思うと、おかしいですね。
篠井 そこから今日まで来たんだからすごいよね。