「女方さんは。性別を超えて表現している時点で、精神的に乗り越えるべきものが立役より圧倒的に多いと思う」(右近さん)

性別を超えた表現に挑む

――篠井さんと右近さんの唯一の共演は、『ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル』(2018年)。スプーン一杯の水が、一歩を踏み出すための人生のレシピとなる……という作品だ。

やや重いテーマで、右近さんの役はイラク戦争での負傷から麻薬中毒になった過去を持つ青年。篠井さんはその母親で、ドラッグ中毒者の集まるサイトの管理人の役を務めたという。

右近 最初に英介さんとのご縁をいただいたのがこの翻訳劇で、あの時はものすごくもがいたし、どうやって切り開いていけばいいかもわからない。でも篠井さんは泰然として、品格もあって、圧倒されましたね。

篠井 もしそうだったとしたら、それは日本舞踊然り、歌舞伎の女方的な要素が僕のベースにあるからなのかもしれない。日本人が日本語で日本のお客さんに観せる時は、翻訳劇であろうと私のベースはやっぱり日本の古典なんです。

だから振袖もロングドレスもちゃんと着こなせなくちゃいけない、って思っている。つまりどっちも同じことなんですよ。

ちなみに、この時はあんまり仲のいい親子の役じゃなくて、嫌われてるお母さんなんだけど、お稽古の時に、息子を殴るか殴らないかみたいなシーンがあって。

右近 ありました、ありました。