右近 その点、篠井さんのような現代劇の女方はかなり珍しい。

篠井 たしかに、様式ではなくリアルさがあるものを手掛ける人は、ほかにあんまりいないかもしれない。『欲望~』だと舞台上でスリップ姿になったりワンピースに着替えたりするし、ほんと恐ろしいですよね。(笑)

右近 歌舞伎の世界と違い、篠井さんは現代劇の女方の時には、あんまり濃い化粧とかしないんですね。

篠井 そうなの。僕の場合、全部を削ぎ落としていくんです。今度の『欲望~』も、鬘(かつら)はつけずに自頭でやるし、お化粧もそんなにしないし、ワンピースは着るかな、と思うけど男であることを隠さないで出ていく。

右近 今の話、男であることを隠さないところに独特の女方の色気が出る、ということに気づかされました。

篠井 ええ、僕が出てきたら「あ、おじさんじゃん」と思われるところから始めて、2時間半の上演時間の間にどう女を演じ切るかが僕の仕事なんですよ。

右近 ああ、観てみたい。でも僕、3月は京都の南座で『曽根崎心中物語』を、(中村)壱太郎さんとお初、徳兵衛を交互に演じるんです。観に行けないのが残念……。