でもその後、何作か新人賞に応募しても、予選落ちの連続。そんな状態が4年くらい続いたでしょうか。それでも応募し続けたのは、「作家になりたい」というよりも、最終選考に残ること自体が目的だった気がします。最初に文學界新人賞の最終選考に残った時の、震えるくらい強烈な喜びが忘れられなくて。
続けた甲斐あって、47歳の時にオール讀物新人賞を受賞。もちろんうれしかったけれど、それで作家としてやっていけるとは思いませんでした。
小説教室に5年も通っていると、だんだんと耳年増になってきて、新人賞を受賞してもほとんどの人が消えていくという現実も知るわけです。だから自分も消えるんだろうなと思ったし、受賞したからには「自分は消えた」と受け入れるまでは、足掻き続けなければいけないのだろうな、と。
受賞の瞬間にそこまで想像して、重いものがのしかかってくるような気持ちになりました。おかげさまでその後、少しずつ作品を発表することができるようになりましたが、2年前までは会社勤めも続けていました。
23年には、『襷がけの二人』が直木賞候補に。大正15年から昭和25年までを舞台とした女性2人の物語です。近現代を生きる女性たちを描く……という点では、賞をいただいた『カフェーの帰り道』とも通じるものがあるかもしれません。
最初から女性を描くと決めているわけではないのですが、書いていると、自然と、女性たちの話になっていく。私自身が市井で生きる女性だからかもしれません。
私は物語というより、人間そのものと、人の生活に興味がある。身近に普通に生きている人たちこそ、愛おしいと思っているんです。
でも一方で、イジワルな目で人を観察するくせもあって(笑)、過去に出会ったいろいろな人たちの記憶を引きずり出して、人物描写に生かしたりしています。