慣れない世界で嬉しい驚きも

執筆は主に午後にしています。午前中は家事で時間をとられ、「洗濯物を早く干さなきゃ」とか思っているうちに、あっという間にお昼に。昼食はたいてい土井善晴さん流の一汁一菜で、具だくさんの汁とご飯ですませることが多いですね。

夕方になると猫がやってきて、椅子に手をかけて「かまってくれ」とアピール。ですから集中して書けるのは2時から6時くらいです。

最近自分に課しているのは、1日1万歩、歩くこと。会社を辞めた直後に体調を崩して、動悸が激しくて夜眠れず、座っているだけで貧血が起きたりした時期があったんです。検査を受けたらとくに悪いところはなく、ホルモンバランスの影響ではという見立てでした。

そんな時たまたま弟の家に遊びに行き、甥っ子や姪っ子と公園で追いかけっこをしたら、その日の晩は体調がよくて。動かないでいるより、たくさん歩いたり少し走ったりしたほうがいいんだと気づいたんです。それからは、わざわざちょっと遠くのスーパーに買い物に行ったりしています。

比較的遅くに文芸の世界に入ったので、未だにとまどうことも多いですが、嬉しい驚きもあります。

初めて直木賞候補になった時の事前取材で、「質問にはなるべく手短に答えたほうがいいですよね」と編集者に確認したら、さも驚いたように「好きなだけしゃべっていいんですよ!」と。

これまで「話は短いほどいい」「自分語りは禁止」の世界で生きてきたので、ここは表現をしていく世界なんだ、と思いました。今はとにかく、もっと執筆時間を増やしたい。だから直木賞の賞金で、洗濯乾燥機を買おうかな、なんて思っています。(笑)

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