布教活動中に嬉しいクレーム
『デルフィニア戦記』は先にも述べた通り、全十八冊に及ぶ。
全部で四部あり、第一部であるこの『放浪の戦士』は、壮大かつ華やかな物語の序章と呼んでもいいだろう。
しかしこの第一部だけでも、物語ががっちり成り立ち完結している。
ここまでお読みになった読者様なら、その完成度と満足度の高さはじゅうぶんご理解いただけることだろう。
もちろん、だからこそ「この続きがあるというのか……!?何をおいてでも(デルフィニアに)行くしかないだろ!」となるわけだが。
余談だがわたしはデルフィニア戦記の布教活動に励んでいた際、必ず第一部の四冊だけを貸していた。「これで完結してるとも言えるから読んでみて!」と言って勧めたのだ。
ほぼ百パーセントで、「続きを一緒に貸してくれなかったなんて、ひどい」「深い沼だというのを隠して紹介したのは狡い」とクレームが来た。
あれは、何よりも嬉しいクレームだった。
推しを語るなら一晩でも
閑話休題。第一部のあらすじに戻る。
臣下の謀反によって国を追われた王ウォルが、異世界からやって来た謎の少女(魂は少年の)リィと出会い、玉座奪還の旅に出る。
奇妙な組み合わせのふたりには性差も年齢差も関係なく、戦士の誇りのようなもので繋がってゆく。
そして、旅が進むにつれて、仲間が増えていき、目指す玉座がだんだんと近くなる。
話の面白さ、構成の絶妙さは当然のこと、出てくる人物すべてが血の通った魅力的な存在であるというのが、本作の大いなる特徴だろう。
ウォルとリィだけではなく、どの人物にも――悪者と言うべきひとや、馬すらも――生き物としてのおかしみと愛おしさ、力強さが詰まっている。
本作を読み終えたひとたちと座談会など設ければ、「推し」は誰かで大いに盛り上がるはずだ。
わたしは、誰と誰のどこのシーンが心躍ったかというような話も絶対にしたい。
そこに参加できるなら、わたしは一晩だって過ごせる自信がある。
というより、一晩じゃ足りないだろう。どれだけの情熱がぶつかることか。
そんなことを想像しながら本作を読んでいると、思うことがある。