「孤独死」の定義と事例

そこで、日本でいち早く孤独死の可視化に努めてきた東京都監察医務院のデータを参照しよう。2010年に同院がまとめた「東京都23区における孤独死の実態」によれば、孤独死を「異状死のうち、自宅で死亡した一人暮らしの人」と定義している。

明らかに病死の場合には「自然死」とされるが、死因がはっきりしない遺体は「異状死」(自殺、事故死、死因不明<病死含む>)に類型され、同院が検案、解剖する。つまり、この異状死のうち、自宅で死亡、かつ一人暮らしという条件に合致するものを「孤独死」としてカウントするということである。同報告書には、監察医からみた孤独死の具体的な事例が掲載されているので見てみよう。

事例(1)

70代の男性。死者は独身で、兄弟はいるが、ずっと会っていないという。隣人が、腐ったようなにおいが日々増してきていること、部屋の明かりがつけっぱなしになっているのを不審に思い110番したことで発見された。死後10日くらい経っていたため、解剖によっても死因は不明とせざるをえなかった。

事例(2)

80歳代の女性。心臓病の診断を受け、主治医からは「いつ突然死してもおかしくはない」と言われていた。死者の子どもが自宅へ様子を見に行ったところ、浴槽内で死亡しているのを発見した。お湯の水を飲みこんだ所見に乏しく、心臓発作により亡くなったものと診断された。

事例(3)

50代の男性。亡くなる数年前に離婚。仕事仲間が、その男性と連絡が取れないことから、自宅を見に行ったところ、居間で死亡しているのを発見した。最近は体調不良を理由に仕事はしていなかったようだが、日常の生活状況は不明であるという。解剖により、心筋梗塞と判断された。

事例(4)

内縁関係の夫婦である60歳代の男性と女性。近所の人と、数カ月前に会ったことまでは判明したが、日常の生活の詳細は不明。男性の息子が、1カ月ほど連絡がつかないことから心配となり、様子を見に行ったところ、自宅の布団の上で2人とも死亡しているのを発見した。解剖の結果、男性は脳出血、女性は腐乱のため死因を決定することができなかった。

前述のようなケースも含め、同院が集計した孤独死の数は、統計がスタートした1987年時点では男性788人、女性335人だった。それが2006年には男性2362人、女性1033人、さらに2020年には男性4206人、女性1890人と一貫して増加している。孤独死者に占める高齢者の割合は高く、同院の2020年の調査では65歳以上が全体の7割を占めた。

なお、同報告書では、死後経過時間についても把握することができる。2020年に孤独死した6096人のうち1日以内の発見が18.2%、2〜3日が27.7%と半数近い人が3日以内に発見されている。