自宅で一人暮らしはどこまで可能か

とはいえ、ずっと独居できるケースばかりではありません。

やはり認知症で一人暮らしだったSさんは、薬の服用をさぼってしまい、具合が悪くなって入院。しかも、その病院からも逃亡してしまいました。

3ヵ月後に見つけ出して再入院してもらい、軽費老人ホームを紹介し、今はそこで穏やかに過ごしています。しかしそこに至るまでに、我々のチームはSさんと何度も話し合いを重ねて信頼関係を築きました。その結果やっと、住まいを変えることを了承してくれたのです。

認知症になった場合、どのぐらいまで自宅で一人暮らしが可能か、みなさん気にかかるところだと思います。

認知症テストで最もポピュラーな長谷川式認知症スケールでは、30点満点中の20点以下だと認知症の疑いが強いとされます。しかし周囲のサポート体制さえしっかりしていれば、在宅療養することは不可能ではありません。

お金の計算はまったくできない。でも一人で靴を履いて外出したり、自分で箸を使ってご飯を食べることなどはギリギリできる。

そのぐらいの状態だと、トイレは自分でできる人も、多少介助が必要な人もいます。それがまったく一人ではできないぐらいに進んでしまうと、やはり独居よりも施設に入居なさったほうが望ましいかもしれません。

《認知症でも独居するための4つのポイント》

【1】“変化”に気づいてもらえるように
セルフチェックし、気になる現象が出てきたら、かかりつけ医に相談。近くの物忘れ外来や認知症疾患医療センターで調べてもらう

【2】キーパーソンを決めておく
何かの時に自分の意思を託す人を決めて、いざという時のお願いをしておく。親類縁者や友人、民生委員、プロの介護支援者、地域の医療者など

【3】認知症の方のリアルを知っておく
「いつか」に備えるため、認知症の方たちの集まりや、介護家族の会が開催する一般向けの講演会に参加したり、ボランティアのお手伝いをしてみる

【4】入院を最小限にするようナビゲートしてくれるかかりつけ医を探しておく
できる限り入院しないための助言をくれる医療者を、今から探しておく。より生活に根差した情報交換ができる医療体制を持ったかかりつけ医を選ぶ