自分の意思を決めて、それを人に託せるように

元気なときは、誰しも「私は人の世話にもならない」と思うものです。しかし高齢になると、認知機能が低下したり、急に意識状態が低下する「せん妄」状態になったりといった事態は、いつ起きるかわかりません。

一人暮らしの認知症の人が安心して暮らすためには、周りに金銭管理や医療処置(たとえば胃ろうを増設する、しない、手術をする、しないなど)を決めるための、意思決定支援の体制を作ることが必要です。

そのためにはまず、自分がどうしたいのか、認知症になる前に決めておくことが大切。そのうえで、キーパーソンを決めておくことです。その人物は親類縁者でも友人でも、あるいは民生委員や、プロの介護支援者、我々のような地域の医療者でも構いません。

認知症に限らず、一人暮らしの高齢者なら脳卒中や心筋梗塞を起こして突然意思表明ができない事態になることも考えられます。そのために、何かの時に自分の意思を託す人を決め、いざという時のお願いをしておくことは必要でしょう。

ただ、「自分が認知症になったら」と言われても、うまくその姿が想像できない方も多いと思います。そこでお勧めしたいのが、認知症の方たちの集まりや、介護家族の会が開催している一般向けの講演会などに参加すること。あるいはそういう会でボランティアのお手伝いをしてもいいかもしれません。そうすることで将来のイメージがつかめたり、どんな準備が必要か具体的に見えると思います。