フェミニズムは、男性も楽にしてくれるもの
すんみ 『私たちには~』のなかで、イ・ミンギョンさんは「もうそれまでと同じようには生きることができなくなった」と表現しています。韓国女性政策研究院の調査によると、韓国では20代女性の約半数が自分はフェミニストだと答えているそうです。一方で、約半数の20代男性が保守化している。女性がいい思いをしていて、男性は逆差別を受けているという理由です。こうした男性は、男性の権威に挑戦する女性に敵対的で、フェミニズムに反感が強い。専門家たちは、子どもの頃からフェミニズムと男女平等の意味を正確に理解できるようにする教育が大切だと話します。
スー そうですね。男の人も、生きるうえで我慢させられたり、制約を受けたりしていると思うんですよ。別の日にラジオ番組のなかで、男性にスキンケア用品を試してもらったのですが、ハマっちゃう人もいて。一方で、「男たるもの肌の手入れなんてするべきではない」という声もあった。ああ、男の人って“気持ちがいいこと”を許されてこなかったんだなって、しみじみ思いました。呪縛は双方にある。フェミニズムは、男性も楽にしてくれるもの、スキンケアみたいに気持ちのいいものだとわかってくれないかな、と思って。
すんみ 韓国でも、若い世代が保守化していく一方で、化粧品の気持ちよさに気づいた男性もいます。ですが、そういう男性は「男のくせに化粧なんかして」とヤジを飛ばされることも多い。それと同じように、家父長制が男性に強いている苦労もあると思うんですよね。それを取っ払ったときに、いかに気持ちがいいかに気づいてくれたらいいですよね。
スー “気持ちがいい”は、キーワードですね。
酒井 韓国は、整形が盛んだったりと、女性が美に強くこだわる印象がありますが、それとフェミニズムはどう折り合いをつけるのでしょう。
すんみ 最近は「脱コルセット運動」といって、逆に「化粧をやめる」「ヒールを脱ぐ」など、「女性らしい」と強いられてきたすべてのことを拒否する女性が増えています。
スー 日本でも今、仕事でヒールを履くのをやめようという動きがありますね。いいと思う。
酒井 「綺麗」「かわいい」の枠からはみ出た部分を無理に矯正するのではなく、個性として肯定的に捉えようという動きもありますよね。それも、ある種の“脱コルセット”。
スー だから、「もうそれまでと同じようには生きることができなくなった」というのは、向かい風に対して旗を立てるようなフェミニズムの立場からの発言じゃなく、男女ともに今まで禁止されていたことから解放されよう、ということですよね。お互いの情報を共有したら、世の中は変わってくるかな、と。