「検査をたくさんしたからといって死なないわけではない。それよりも、“死なないための診療の流れ”を作ることが最善だと思います。」

テレビのワイドショーではよく「不安解消のためにPCR検査を増やせ」と言っていますが、感染者を100%拾えるわけではありません。ですから医師が必要だと判断した患者さんに受けていただければいいし、検査をたくさんしたからといって死なないわけではない。それよりも、“死なないための診療の流れ”を作ることが最善だと思います。

幸い日本は外国と比べて、CTスキャンの保有台数が突出して多く、肺炎を早く発見できるので、患者さんが重症化する前に集中治療につなげることができます。新型コロナは8割が無症状または軽症で治る病気。

ところが2割は発症して1週間から10日くらいで重症の肺炎を起こす。そのなかで一定数が急激に悪化して、人工呼吸器をつけることになりますが、多くは1~2週間で一般病棟に移ることができます。またECMO(エクモ=人工肺)を装着した場合も生還することはあるのです。

もちろん不幸にもお亡くなりになる方はいらっしゃいますが、その数をなんとか少なくして、回復につなげていくことが私たちの務めです。

特に集中治療室にいた重症患者さんは、一定期間寝たきりになるわけで、回復には時間もかかる。命は助かったけど動けなくなりました、では患者さんのQOL(生活の質)が下がってしまいます。自分の足で歩いて退院できるように、リハビリのスタッフが力を尽くす。医師や看護師など、最前線の医療従事者は感染のリスクを抱えつつも、患者さんのために最善のことをやっています。

今回、うちが大きな院内感染を出していないことは、ただ運がよかっただけ。どこの病院も防ぎきれないことはたくさんあり、次回の流行の際も院内感染を絶対に起こさないという保証はありません。今後も院内感染のリスクを少しでも減らすことに知恵を使っていきたいですね。