母親は「あなたがやりたいのなら、いいんじゃないの。そのうちなんとかなるわよ」というスタンスで、こうしないと幸せになれないという押しつけはなく、やりたいことをやらせてくれました。

現在の私と子どもたちの関係も同じで、いい感じで“野放し”です。休校になる状況でも、彼らは自分たちなりに楽しく過ごしています。私は子どもたちに「応援はするけれど、今後の人生は自分たちで何とかしなさい」と言っています。「栄えるか滅びるかは、あなたたち次第よ」と。去年の子どもたちよりも、今年の子どもたちのほうが成長しているので、心配はしていません。かつて私の親がそうだったように、期待を持って見つめています。

自由にさせてもらったぶん、模索しながら壁にぶつかり、決してストレートに来られた道ではなかったのですが、客観的な“俯瞰の目”を生かせる感染予防の仕事は、実は天職だったのではないかと思っています。

 

コロナウイルスの目的は何か?

今は、感染拡大が少し落ち着いて、中休みのような状態です。やっと通常の感染予防の業務もできるようになってきました。しかし、おそらく第二波、第三波が出てきそうなので、今のうちにこれまで培ったノウハウを整理しておこうと思っています。予想を上回る世界的な大流行と混乱のなか、けものみちをたどるような状態で治療と予防に当たってきました。その道をきれいに整え、誰もがスムーズに歩いていけるようにしておきたいですね。

新型コロナウイルスは感染しても無症状の人が多く、軽症でもウイルスを排出するということは、ある意味、ヒトと共存したい病原体だと思います。自分たちウイルスが生き延びるためには宿主であるヒトをすべて殺してしまうと不都合だからです。今後、治療薬やワクチンが開発されるかはわかりませんが、何かしらの「武器」を手に入れ、ハイリスクの人が死なない努力をしていきたい。

収束が見え、気持ちも緩みがちですが、まだまだ気は抜けません。これまで通り手洗いを心がけ、飛沫感染、接触感染を防ぐことが大事です。必要以上に恐れず冷静に――。ひとりひとりがやるべきことをやって前に進めば、きっと終わる日が来ると信じています。

このインタビューは5月12日に収録しました