旅を計画するとき、アソコへ行ったらアレを見なければ損をする。アレをしなければもったいない。そんな通例に左右されていた時期も長かった。ところがあるとき、何度ハワイへ行っても「水着を持っていかない。泳がない。太陽に当たらない」をモットーとしている旅好きの女友だちの話を聞いて、仰天した。

「せっかくハワイに行ってビーチに行かないの?」

 ちょっとせせら笑ったかもしれない。すると彼女はかすかにムッとした様子で、

「旅先で何をしようと自由です」

 そりゃまあ、そうですけど。

「じゃ、ハワイで何をするの? ショッピング?」

「ショッピングもするけれど、だいたいはホテルで本を読んで過ごします。海を見ながら」

そのときは納得し切れなかった彼女の言葉がその後、じわじわと私の心の中で広がった。もしかしてそういう過ごし方のできる旅がいちばん贅沢なのかもしれない。観光ガイドに翻弄されて義務のように街中を巡ったり名所旧跡を訪ねたり。もちろんそこに感動がないわけではない。しかし、非日常の景色に囲まれて、日常と同様の時間を過ごす。それは特上の旅になるだろう。気の小さい私にはまだ試す自信がないけれど。