なぜベストセラーに?
アメリカが介入していたベトナム戦争は泥沼化。73年1月に、アメリカ軍は撤退します。同じ年の10月、第四次中東戦争を機に第一次オイルショックが始まり、日本でも石油価格が高騰。「狂乱物価」などという言葉も生まれ、不況が始まり、高度経済成長が終焉を迎えました。僕はよく覚えていないのですが、日本では人々がトイレットペーパーを買いに走り、店頭からトイレットペーパーが消えたりもしました。
高度経済成長のひずみとして、公害問題も深刻になりました。大気汚染、光化学スモッグやどぶ川汚染をはじめ、イタイイタイ病、水俣病、四日市ぜんそくなど、公害が原因の病気が各地で起こるように。それまで科学技術に支えられた明るい未来像を描いていた人たちも、73年あたりから、未来に対して漠然とした不安を感じるようになったのかもしれません。
「経済成長は、私たちを幸せにしてくれるんだろうか」
「科学万能とかいってるけど、ほんと?」
そんなふうに思う人も出てきたでしょう。
また、米ソ冷戦を背景に、核戦争の危機も現実味を帯びて感じられた時代。なかには70年の大阪万国博覧会のテーマ「人類の進歩と調和」を、どこか白々しく感じた人もいたのでは?
そんな終末観が広がるなか、73年には小松左京が出した『日本沈没』(光文社)がベストセラーに。『ノストラダムスの大予言』もなんとなく現実味を帯びたものと感じられたのではないでしょうか。
社会全体の終末論的な予言と、人生の先行きを見通すという占いが並行して流行、人々の心を刺激していたというわけです。
※本稿は、『占い師の正体-人はなぜ占いに惹かれるのか』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。
『占い師の正体-人はなぜ占いに惹かれるのか』(著:鏡リュウジ/中央公論新社)
「占いが当たる」とはいったいどういうことなのか?
占いは、科学や統計学なのか?
病か、それとも救いか?
人間にとって占いとはなにかを正面から問い、占いという謎めいた営みの魅力、魔力、その本質に迫る。





