清水版『八つ墓村』の面白い演出
さて、今回の『八つ墓村』は、ヒューマンドラマ色はあえて排除した感がある。奥智哉演じる井川辰弥は美しく、眼福この上ない逸材だが、養護施設育ちという設定で「母に捨てられた」と思っているため、母の死を聞いても動じず、あらゆる感情表現は薄い。大きな運命に引き込まれるキャラクターとしては若すぎる気もしたが、「現代性」の表現にはある意味ぴったりだ。
一方で、金田一を演じる尾上松也は存在感たっぷり。今までにないコミカルで押しの強い金田一を演じていて秀逸。冴えた推理を連発するというよりは「目撃者」に徹し、「この事件は、俺の手には負えない」と呟くあたりには、好感を持ってしまった。
演出上何より面白く感じたのは、文化人類学的アプローチというか、「八つ墓村」という名前の由来となった460年前の、「村人による落ち武者の惨殺」を、その村特有の「奇祭」や「面」の案山子、魔よけの不気味な飾り物という、文化的装置に変容させて見せた点だ。
村特有の文化的な小道具を通してなら、舞台が現代でも、大昔の怨念が村に宿るという設定も受け入れられる。また、村人たちに監視されているような視線の描写も、「管理社会に生きている現代人」を風刺するかのよう。
清水版・『八つ墓村』の設定は、のっけから説得力があり、画面中にホラーな小道具が仕込まれていて、画面的にも面白い。
そして460年前の落ち武者たちを裏切り、村人たちが騙し討ちにして惨殺するシーンのリアルさ。ここは、3作品の中でも本作がピカイチなのではないか。それは見所である村の祭りの舞踊にも活かされていくため、「殺され方」が実に具体的。相当の研究と工夫がなされたに違いない。殺されていった武士たちの無念が怨念となり、460年間、田治見家の当主を変死や狂気に追いやったというのも納得だ。
