2人の違いに丁寧に向き合って

オリジナル版出版当時は、海外での生活が身近ではなく、国際結婚した夫婦の日常は多くの読者にとって新鮮に受け止められた。「当時はみんな、まだ外国人に慣れていなかったかもしれないですね。知り合いに外国人がいます、という人もそんなにいなかったんじゃないかな」と振り返る。

「国際結婚の現実」がテーマの作品だが、そこにとどまらず、性格の違う人間同士の対話をユーモアを交えながら丁寧に描き、「違い」をポジティブに受け止める姿が幅広い読者から支持された理由だ。

印象的だったエピソードの1つが、家事分担をめぐる2人のやり取り。掃除や炊事など家事をしていなかったトニーが食器洗いを始めることに。トニーのやり方はさおりの理想通りではなかった。2人は話し合いの末、トニーのやり方に任せる。さおりは、多少の不満があっても「ま、いっか」と自分に言い聞かせることでストレスがたまらないことに気づく――。

『ダーリンは外国人 リマスター版』さおりの要望に、トニーが「ボクのやり方に任せて」と返すコマ
『ダーリンは外国人 リマスター版』より

「トニーは家事が得意とは言えないけれど、外国人ですごくできる人もいるでしょう。自分の育ってきた価値観をどこまで重視するのかというのはやっぱり人それぞれ。宗教を信じていたらまた違うでしょうし、古いことに囚われず新しいことが好きな人もいる。むしろこれまでの文化を捨てたくて違う国へ行く人もいるでしょうから。やっぱり人それぞれだと思っています」と語る。

作中では、けんかの原因やうまくやるコツも描かれる。トニーとさおりがそれぞれどんな思考なのか「考察」して、落としどころを見つけていくステップが面白い。

「けんかは少ないほうだと思うけれど、やっぱりトニーとの間に軋轢はありました。もめる理由はだいたい家事。家事の出来上がりがトニーと私の間で大きく違っていましたから。育ってきた背景が違うので、どこかで妥協点を見つけることになる。私たちの場合は、ぶつかったら話し合って、落としどころを探して、の繰り返しでお互いの対処法を学びました」