けれど、上の段階へ進むには、色無地の着物一式を買わなければ選考試験を受けられないと言われた。20万円を超える金額だった。
色無地なんて、私はそうそう着る機会がない。それでも着物を買い、さらに講習料、試験代、登録料がその都度かかる。自分が行き着きたいところまで進もうと計算すると、70万から80万円ほど必要だった。
無理だ、と思った。
先生になったところで、それで食べていけるかどうかも分からない。教室では、周りの人が高い帯を簡単に買っていた。私はそんなふうにはできない。
着物って、お金がないと先生になれないのかな。歳は毎年とっていくのに、私はいつ先生を目指せるんだろう。そんなことを考えた夜、急に悲しくなった。
私の人生って、なんなんだろう。
同年代の友人たちは、「やっと楽になる」と言っている。私はまだ、子どもの予定を確認している。恐らくまだあと10年近く。長いなあ、と思った。
もちろん、子どもがいなかったら、なんて思わない。子どもには何の罪もない。
今ある環境も変えられない。だったら、自分のことを諦めるしかない。
一旦諦めよう。
私は着付け教室をやめた。