働くことへの矜持と侘しさ

ふむ、結婚式は職場の後輩のもの。そしたら後輩の一人が、先を越されてしまいましたね、と。耳にイガイガする言葉でございますな。え? 先ほどのウェディング姿が見たいも同じだと? 結婚して誰かのものになることで一人前なんてナンセンス! と……なんでしょう打ち明けモードのお声。シーツの下のおっぱいは見て見ぬふりいたします。

む? 私、独身主義者なの、とおっしゃいましたか。なんでそんな大切なこと、わたくしめにおっしゃらなかったのでございますか? 世間から白い目で見られる、いつまでも半人前で見られる、とな。ふむ。そんな苦しみを持ったお嬢様に、北山あさひさまのお歌のお振舞いです。

結婚はもちろん法的には誰かとするもの。ですが、独身主義が目立ち始めた現代において、家庭を持つことが一人前、あるいは夫婦のみが家庭の形だというのは息苦しいもの。女性の間では結婚はしなくて良いから、ウエディングドレスを好きな友達たちと着て、パーティーがしたい、という声を聞くことがあります。思えば、晴れのドレスを着て祝われるのが結婚式だけというのは、なんだか寂しいものでございますな。またそこに飾られる花も、薔薇でも百合でもひまわりでもなく、野草のたんぽぽという所がミソでございます。晴れの日のために調えられた花ではなく、あるものがごく自然にあるように、一人で結婚がしたい。一人であることを祝われたい。この意見は、一見ユニークながら、家庭制度に縛られながら働いている現代女性のナチュラルな声かもしれません。

あの赤いプラダの財布よかったな買おうかな働いて働いて  北山あさひ

「よかったな買おうかな」の後に来るのが「働いて働いて」なのが、北山あさひさまの歌の特徴でございましょう。もちろん誰かに買ってもらうのではなく、自分で買う。それも「働いて働いて」稼いだお金で。この、働くことへの矜持と同時にその侘しさまで引き受けているのが北山あさひさまでございましょう。この不景気の中、颯爽と華やかなだけでは働けない。泥水を啜り、時に泥水に塗れながら、それでも前を向く。そんな姿がこの歌からは感じられます。「赤いプラダの財布」というのも印象的ですね。赤い色はお金を使うたび目に止まり、心を励ましてくれる。お金を管理する人間にとって大事なアイテムが財布です。それを、お金を稼ぐ側が欲しくてたまらない。