自分にとっての真実を守り抜く

ろうそくの火を吹き消してもうおばさんですってそんなことが何になる

ハッピーバースデーケーキ。それを吹き消して、「もうおばさんです」という。ここには自虐というより、自らそれを認めることによる周りへの温かな配慮を感じます。それでも、自分を「おばさん」とカテゴライズすることで周りに配慮することの空々しさ。また、それが逆に若さを崇拝することにつながっている愚かさを作者は知っています。だから「そんなことが何になる」。ファニーな口調ですが、酸いも甘いも見抜いた上で、自分にとっての真実を守り抜く。その清らかさが見事です。

さあ、お風呂に入ってきてください。お嬢様に絡み付いた社会の不条理な苛立ちも、洗い流してくれるでしょう。バスソルトにはラベンダーを用意しました。これで眠れるはず。いえいえ、お礼には及びません。これこそ本来のわたくしめ、執事のお仕事。よし、入りましょう。あ! でも、そのまま全裸で行かないで―――!!

今回ご紹介した歌人

北山あさひ(きたやま・あさひ)
1983年北海道小樽市生まれ。第7回現代短歌社賞を受賞。2021年、歌集『崖にて』で第65回現代歌人協会賞、第27回日本歌人クラブ新人賞、第36回北海道新聞短歌賞を受賞。その他に歌集『ヒューマン・ライツ』がある。

【関連記事】
老いていく頬を見てほしい。恋の次の段階へ――
時代も性別も世代も超えて、あたらしい声が聞こえる
恋する胸にド直球。ピュアで危うげなあの頃を追体験せよ