そういえばOL時代、夜遅くにタクシーで帰宅し、家の前の道に入ると、遠くにヘッドライトに照らされた母が見えました。遅い遅いと思って部屋から玄関に出て、まだかと思って外に出て、道まで出て……。

携帯電話などない時代の、娘を心配する母の気持ち。いまなら痛いほどわかる親の思いです。

私が均と喫茶店をはじめた頃、少しずつ母に認知症の症状が出てきた、ときょうだいから聞くようになりました。店の定休日の土曜日、できる限り実家に行こうと決めました。

あるとき母と外出して靴をプレゼントしたところ、妹のかずみに買ってもらった、と家族に話していたことを知りました。「よしみは忙しい」と思い込んでいるのでしょう。私のことがわからなくても、私が会いたいのだからかまわない。

金沢までほとんど日帰りでしたが、一泊できたある朝、和室で父と並んで眠る母の布団にもぐりこんだことがあります。

「あら〜、やだわぁこの子。いくつやと思ってるの?」と笑う母。「お母さんのにおいやわぁ、変わらないわぁ」。私はほかの家族が起きてくるまで、母と並んで横になりました。母とひとつの布団で寝た最後の思い出です。