加齢によりヘモグロビンの量が減少。
赤身肉・赤身魚から十分な鉄分補給を
先進国で最も多い日本女性の貧血
貧血とは、赤血球の中で酸素の運搬を担うヘモグロビンの量が減ってしまい、体中が“酸素不足”になる症状のことです。
「2016年のWHO(世界保健機関)調査によると、日本人女性(15~49歳)の約22%が貧血と報告されました。アメリカ人女性の約13%、イギリス人女性の約15%と比べると多く、食べ物が豊富な先進国としては残念な数字です」と言うのは、ナビタスクリニックで貧血外来を担当する山本佳奈先生。
「数ある貧血症状の中で最も患者数の多いのが、鉄不足から起きる『鉄欠乏性貧血』です。鉄はさまざまな食品に含まれていますが、含有量が少なく、体内に取りこみにくい成分なので、多くの人が不足しがち。実は、貧血対策として食品に鉄を添加する対策をしている国は多く、アメリカやイギリスでは小麦粉やシリアルに、フィリピンでは米に鉄を添加していたり、中国、ベトナム、タイでは油に鉄を強化していると聞いています」(山本先生。以下同)
国家的な取り組みのない日本では、一人ひとりが正しい知識を持ち、鉄不足に向き合う必要があります。
「体内の鉄の量は、正常値で約3~4gです。その約65%がヘモグロビンにあり、約25%は貯蔵鉄として肝臓に蓄えられ、ヘモグロビン不足の際に放出。約5%はミオグロビンとして筋肉中に存在しています」
鉄は、ヘモグロビンの構成要素で、肺で受け取った酸素と結びつき「酸化鉄」となって、全身の組織に酸素を運搬する役割を担っています。その後はヘモグロビンの原料として再利用されるほか、毎日約1mgは汗や尿によって体外に排出されてしまうそうです。
「成人女性の場合、ヘモグロビン濃度が12g/dL未満になると、貧血と診断されてしまいます。濃度が正常値でも貯蔵鉄が少ない場合があり、そんな人は息切れ、動悸、めまい、頭痛、倦怠感など、貧血の症状が出ることも。肌荒れ、抜け毛、爪が反る『スプーンネイル』、氷を好んで食べるなども貧血のサインです」