棋士にとってのターニングポイントとしては、45歳や50歳という年齢が挙げられやすい。もちろんそれも個人差のあることだ。それより早い40歳、あるいはそれより遅い60歳といった年齢がターニングポイントになるのかもしれない。

退(ひ)き際(ぎわ)といったことまでは考えないにしても、40代くらいになってくれば、集中力や体力が落ちていくのは避けられないのではないかと意識している。

それらを落とさない努力はしているが、ある年齢に達して変化を感じたとき、「あと十年は成績にかかわらず、とにかく頑張る」といった考え方をするのかどうか……。

自分ではそういう選択はしないのではないかという気がしているが、実際どうするかはそのときになってみなければわからない。

いまの私は、今後の棋士人生、棋士として残せる成績を左右する「勝負の時」を迎えている。この先、年齢を重ねていけば、やはり一年一年が勝負の年になっていく。

33歳で成績を落とした際には、やり方を変えることによって乗り越えられたが、これから先、40歳、45歳などの年齢でまた成績が落ちることがあれば、そこでもう一度、モデルチェンジができるかどうか……。

実際にどうするかはわからないが、何かやれることはないか、と考えてみるには違いない。それもしないで身を引くことだけはないはずだ。

〝何かを見つけることによって変わる〟ことはある。

いま苦境にもがいている人も、それを脱する手立てはどこかにあるはずだと考え、あがいてみるのがいいのではないだろうか。

どんなことにも限界はあるかもしれないが、あきらめてしまえばその先はない。


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