病気の詳細を歌手で友人の平松愛理さんにだけは打ち明けていたという岡村さん。平松さんや音楽仲間、ファンの方々から贈られた千羽鶴やお守りに「ありがとうをどれだけ伝えても足りないです。ここを越えて、またコンサート会場でお会いできる日を楽しみに頑張りたいと思います」と語った(写真提供:岡村さん)

臍帯血移植のため大量の抗がん剤を

ただ、不幸中の幸いだったのは、病気が早く見つかったことです。白血病は、血液細胞が骨髄で作られる過程でがん化することにより起こります。具体的な症状に気づくのは、そのがん化した「白血病細胞」が骨髄で増殖し、骨髄の外にあふれ出してきてからというのが一般的だとか。そのため、重篤な状態で倒れてしまい、救急車で病院に運ばれてから病気に気づくことが多いそうなんです。

でも、私はたまたま健診で見つかったため、「白血病細胞」がまだ骨髄の中にとどまっている状態でした。健診を受けた週も、デパートを歩き回って買い物をしても平気なほど元気だったのです。

実は、健診の際、先生が「念のため、最後にWT1という検査もしておきましょう」と提案してくださり、そのWT1の結果で急性白血病だとわかりました。たんなる血液検査だけでは白血病に気づけず、もっと重篤な状態になっていたかもしれません。そのとき検査をしてくださった先生方には本当に感謝しています。

治療のために入院したのは、健診を受けてから10日もたたない4月18日でした。私の受けた治療は、1クールが5~7日の抗がん剤治療を3クール。抗がん剤を点滴するほか、輸血も必要になるため、まず、CVという中心静脈カテーテルを首の付け根の血管に入れる手術を受けました。そこから何種類もの抗がん剤を注入するのです。近頃は吐き気止めの薬が優秀で、私の場合は抗がん剤治療を3クール受けている間、少しムカムカする程度で、1度も吐かずに済みました。

ただ、抗がん剤の副作用でひどい口内炎ができたのは苦痛でしたね。原因は虫歯が何本かあったからだと思います。治療はしていたのですけど、歯の根元に膿がたまっていたせいで、口内炎ができてしまった。もっときちんと歯の治療をしておけばよかったと後悔しました。

激しい副作用に悩まされたのは、7月に臍帯血移植を受けてからです。ひとくちに白血病といってもさまざまなタイプがあるそうで、私の場合は、完治を目指すなら、抗がん剤治療だけでなく骨髄移植か臍帯血移植を受けたほうがいいと、当初から言われていました。

でも、骨髄移植は自分の白血球の型と合うドナーを見つけるのが難しい。その点、臍帯血移植はそれほど厳密に型にこだわる必要がないので、ドナーが見つかりやすく、臍帯血バンクに状態のいい臍帯血が保存されているとも聞いて、この移植を受けることに決めたのです。

移植といっても、抗がん剤治療と同様に、首のカテーテルから臍帯血を注入するだけ。時間にして20分ほどで終わります。ただ、他人の血を体内に入れるので、拒絶反応を起こさぬよう、3クール目となる移植の前処置の抗がん剤治療で、自分の骨髄の中の白血球をゼロにしておく必要がある。そのために大量の抗がん剤を点滴するのですが、この副作用がとってもつらくて……。点滴をして臍帯血移植を受けた後は、さすがの私も毎日吐いてばかりいました。

また、治療の一環で大量のステロイド剤も使っていたため、その副作用で骨がもろくなり、知らないうちに、背中や腰の骨と骨の間の隙間が6ヵ所もつぶれて折れてしまいました。ベッドから起き上がろうとしても、痛くてまっすぐに体を起こせない。退院後も骨折の不安があったので、最近までずっとコルセットを巻いていました。4月半ばに入院し9月末に退院するまでの約5ヵ月間、過酷で体に負担のかかる治療を受けていたのだなと改めて思います。