日本のシニア世代の考え方は「先憂後楽」

茂木 ネットワーク科学には、家族のように身近で強い絆も大事だけど、SNSなどを通じた遠くて弱い絆が、その人にとって有用な新しい情報を運んでくれるという研究があります。老人会でちまちま近所の噂話に興じるだけじゃなく、ネットの世界を通じてシニアがゆるやかに繫がる社会は理想的ですね。

若宮 メディアが「詐欺」や「炎上」など、ネガティブな情報で不安を煽りすぎるんですよ。それは薬で言えば、効き目より副作用ばかり取り上げるのと同じ。出会い系サイトだって、それで幸福な結婚をしているカップルがいると思いますもの。

茂木 82歳の女性から、まさかの出会い系サイト擁護発言(笑)。若宮さんと話していると、つくづく「○○らしさ」こそが「脳の敵」なんだと実感するなあ。僕は基本的に、人を年齢で判断する習慣がありません。実は、20代以降になると、100歳を超えようが、脳の働きはほぼ変わらないのです。逆に「歳だから」「シニアはシニアらしく」と枠にはめることで、その人の可能性を抑圧してしまう。

若宮 私の知り合いでも、「ピアノを習いたいけれど、70歳だから無理」と諦めている人がいます。人生100年時代なのだから、今から始めても30年は楽しめますよねえ。

茂木 人間の脳は、「今ここ」を楽しむことによって最も活性化されます。結果、免疫系が刺激されて健康になるし、幸福感も高まるんです。

若宮 日本のシニア世代の考え方は「先憂後楽」。先に苦労をしておけば、後に良いことが待っていると思いがちでしょう。健康のために食べるのを我慢したり、老後資金を貯めようと楽しみを諦めてしまったり。

茂木 将来の健康のために今苦しむよりも、好きなことをしていたら、気づけば健康だったというほうが、人生は充実しますよね。昨年亡くなったホーキング博士は、常に宇宙のことを考えて幸福に生きていた。ケンブリッジで何回かお見かけしたけれど、いつもご機嫌で電動車椅子を走らせていましたよ。

「若宮さんと話していると、つくづく〈○○らしさ〉こそが〈脳の敵〉なんだと実感するなあ」(茂木さん)