他人のために何かする時の脳活動は、嬉しい時と同じ

若宮 「hinadan」はおかげさまで、ダウンロード数が8万を超えました(2018年4月時点)。シニアはもちろん、スマホの操作に不慣れな方からも、「こういうゲームを待っていた」とお褒めいただくのが嬉しいです。

茂木 若宮さんは、自分がコンピュータで楽しく遊ぶだけでなく、コミュニティサイトの世話人を引き受けたり、シニア向けのパソコン教室を開いたりなど、誰かの役に立つ活動も続けているでしょう。

若宮 もともとお節介な性分で。

茂木 それは脳にとって大事なこと。「利他性」といって、他人のために何かしている時の脳活動は、自分が嬉しい時と同じなんです。逆に、人間の脳にとって最大の危機は「自分が必要な人間と思えなくなる」こと。子どもが独立した後のお母さんや、定年退職したお父さんが元気を失くすのは、そのためです。

若宮 ITに限らずさまざまな分野で、シニアが本当に望んでいることを自ら発言する機会も増えました。今後、介護の現場にAIが入ってきた時に、シニアが使いやすい入力方法は何か、とか。プログラミングについても、「初心者が簡単に自分のためのアプリを作れるアプリ」があったら、素敵だと思いません?

茂木 そうした発想も、経験したことから生まれていますよね。若宮さんはプログラミングだったけれど、どんな分野でも、新しい経験をして自分の可能性に気づき、それを人生に生かせた時、脳は喜びます。読者の皆さんも、「世界最年長のプログラマー」に刺激を受けて、知らない世界へチャレンジしてくれたら、世の中もっと面白くなると思うなあ。

若宮 私もまだ82歳。興味を持ったことにはどんどん飛び込んでいくつもりです。