わにと新井さんの因縁

ここでまったく話が変わるのですが。

こんなことになってしまったのは……多分、わにのせいだと思うんですよね。
私が子供だった頃。
うちには、十匹を超すわにぬいがいました。(……まあ……その……思えば。今から半世紀も前、そもそも子供が十匹以上のぬいぐるみを持っていること自体が、何か変だっていえば、変ですよね。しかも、それが、わにぬいばっかり。)


私の、生まれて初めてのぬいは、犬のわんわんさんなんですが、子供の頃、私がほんとに執着して大好きだったぬいが、わにのエッセルさん。ところが、これ、実は妹のぬいぐるみだったんです。妹がお誕生日かクリスマスに買ってもらったぬいが、エッセルさん。だけど、私、本当にこの子が好きで好きでたまらなくって、自分でも欲しくなって、でも、小学生だったので、自分でぬいぐるみなんて買える訳がなく、誕生日の度に、クリスマスの度に、親に「わにぬいが(実の処エッセルさんが)欲しいっ!」って言い続けていたみたいだった……らしい……です。(具体的に、エッセルさんって言わなかったのは……わにぬいって言い続けていたのは……エッセルさんは、この世に一匹しかいないぬいなので、その子を欲しいっていうのは変だって自分でも判っていた為だと思われます。)


で、そのちょっと後。私、どっかの進学塾にはいりまして(というか、親にいれられた)、そこで親に交渉。ここでは全国統一テストみたいなものがありまして、そこで、〝何番以内にはいったら、ご褒美でぬいを買って貰える〞という条件を設定しまして、そのご褒美は、勿論、わにぬい。とにかくエッセルさんが欲しかったんです。で、自分で言うのも何ですが、こうなった時の私の瞬発力は凄いです。そもそも親、無理だと思ったからこういう設定をしたんだろうと思うんですが、は、は、は、甘い。クリアしちまったよ、私。それも何回も何回も。親が無理だと思っていた〝何位以内〞を達成してみせました。(やる時にはやるんだ私。って……何の自慢にもならないような気もしますが。)


で、私は、何匹もわにぬいを買ってもらって……でも、エッセルさんは、来てくれなかった。親に文句を言っても、「あのわにはどうしても売り場で発見できなかった」って言われるだけ。かといって、この設定でうちに来てくれたわにぬいを差別するのは絶対に変なので……とにかく、新たに来たわにぬいを愛しつつ、いつか新しいエッセルさんを自分のものにしたいと思いつつ……とにかくうちには、わにぬいが増えてゆく……という状況を、当時の私は、甘受しておりました。


そして。あるクリスマス。同居していない、母方の祖母が遊びに来た時、頭を抱えたそうです。母方の祖母は、私と妹に、とても素敵なお人形さんを贈ってくれたらしいのですが……どうも私、まったくそれを喜ばなかったみたいで。(私が欲しかったのはわにぬいなので、どんな素敵なお人形を貰っても、あんまりそれに感動できなかった……。)孫娘が大喜びすることを期待していた祖母、愕然としながら、「素子ちゃんは何が欲しいの?」って聞いた処、私の返事が、「わに!」。で、妹に同じことを聞いた処、妹の返事が、「蛇!」。(この時妹が何を考えていて蛇が欲しかったのか、私にも判らない……。)