会うたび交わす「お約束」

晩年の野村克也さんとは、お会いするたびに交わす「お約束」があった。

「お前を抑えにしてすまなかったな」

『愛と哀しみのスワローズ』(著:高津臣吾/KADOKAWA)

「いえいえ、感謝しています」

その繰り返しが、僕たちの信頼の証だった。19年秋、監督就任の報告に行った際、野村さんはいつもの「ノムさん節」で僕を迎えてくれた。

「お前が監督か。他におらんのか?」

「えぇ、いないようです」

そう返すと、監督は少し嬉しそうに笑った気がした。

口には出さなかったけれど、教え子が古巣の指揮を執ることを、誰よりも楽しみにしていたはずだ。そのシーズンを見届けてもらえなかったことだけが、残念でならない。