最後のアドバイス
このとき、監督は僕に最後のアドバイスをくれた。
「最下位のチームを引き受けたのだから、失うものは何もない。だから、気楽にやりなさい。弱いチームを強くしていくのはエネルギーがいることだけど、すごく楽しいぞ」
これが、恩師から僕に贈られた「最期の言葉」となった。
僕が監督に就任するにあたって改めて見返した、かつての『野村ノート』。
驚いたのは、何十年も前に書かれたものなのに、今の時代につけ加えることがほとんどなかったことだ。野球の奥深さ、難しさ。カウントごとの心理戦。単に「投げる」のではなく、握り、回し、離すまでのプロセスを「考える」ということ。
野村監督が提唱した「ID(データ重視)野球」の本質は、データの活用以上に、「徹底して思考すること」にあったのだと、指導者になって改めて痛感している。
時代が変わっても、通用する真理は変わらない。それを現代流にアップデートしながら、今の選手たちに伝えていくことが、僕に課せられた使命だと痛感したものだった。