2020年3月24日、安倍総理は国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長と電話会談。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、東京五輪・パラリンピックを延期し、21年夏までに開催することで合意した(イメージ/写真提供:写真AC)
専門家が独自の目線で選ぶ「時代を表すキーワード」。今回は、政治アナリストの伊藤惇夫さんが、「レガシー」について解説します。

在職日数以外に、首相が打ち立てた「業績」は?

吉田茂は日本の主権回復、佐藤栄作は沖縄返還、田中角栄は日中国交回復……。

歴代総理の中で、すぐに名前が思い浮かぶ人物たちは、いずれも在職中、人々の記憶に残るような政治的業績や成果を上げている。政界ではこれを「レガシー」と呼ぶ。本来は「遺産」の意味だが、総理の座に就いた者の多くは、何とかレガシーを残したいと思うらしい。

安倍総理はすでに在職日数では歴代最長記録を打ち立てている。それだけでも十分な気もするが、永田町ではただ在職期間が長いというだけで、レガシーと“認定”されるのは難しい。自民党総裁任期(2021年9月末まで)が残り約1年と迫ってきた今、おそらく安倍総理の頭にも「レガシー探し」がかすめているのではないか。

ただ、得意(?)の外交面では、北方領土の返還も北朝鮮による拉致問題の解決も、なかなか展望が開ける状況にはない。となれば、安倍総理が悲願としている憲法改正は、絶好のテーマのはずだ。ご本人もことあるごとに、実現への意欲を口にしている。だが、いまだに改憲の「入口」となる国民投票法の成立すら目途が立っていないことや、政権の体力低下もささやかれ、残された時間からみても、かなり難しくなってきた。

そこで、唯一残るレガシー候補といわれているのが、来年の東京五輪・パラリンピックの成功だ。いわゆる「五輪花道論」である。ただ、新型コロナウイルスの終息も見込めないなか、開催を危ぶむ声も高まっている。果たして安倍総理は、「レガシー」を残せるのか。