やっと見つけた会社がまさかのコロナ倒産

再び職を求めてハローワーク通いの日々。半年ほどすると、シルバー人材センターからパート求人の連絡が来た。清掃会社の事務所での机上事務と午前中だけの室内清掃業務とのこと。健康であれば70歳を超えても数年は延長可能と説明を受ける。歳を重ねた自分でも経験を生かせるのでありがたい職場だと思い、ここで働くことに決めた。

そうして6年が経過し、70歳を迎える年の始め、上司から「就業規則の改定で、パートは70歳の誕生日付で退職と定められた」と通告された。世間では、高齢化に伴って雇用年齢も上がりつつあるというのに、理解しがたい思いだったが、就業規則だと言われれば太刀打ちできない。私は満70歳の誕生日で退社した。

またしても再就職のために訪れた6年ぶりのハローワークでは、何をどうしたらよいか茫然とするばかりで、係の人に何度も確認しながらやっとのことでパソコン検索をする。出てくる求人はどれもこれも、私には無理と思うものばかり。年齢を考えれば妥協も諦めも必要とわかっているのだが、プライドが邪魔して条件に納得できない。

その後1年以上を経て、昨年6月、偶然立ち寄った着物のリサイクル販売店で求人をしているのを発見した。不要となった着物の買い取りと販売のほか、クリーニングや直しの手配も行う店だ。着物の趣味を生かせるうえ、何歳まででも働けると聞き、これだと思った。仕事は楽しく、今度こそずっとこの仕事を続けたいと思っていたのだが、今年の4月に会社はまさかのコロナ倒産してしまった。

コロナの影響で、今はどこの求人も面接はオンラインで行うという。私にはハードルが高すぎて、再就職を目指して何かしようという気持ちには今のところなれない。10年前から自宅で開いている茶道の教室だけが、現在の私の仕事である。カルチャー教室で知り合った方を招いて細々と始めた教室なので、週1回くらいのものだが、これがあるからまだ気持ちを保てているのかもしれない。

最近知り合った女性で、薬剤師をしている人と、病院で事務に従事する人がいる。二人とも80歳に近い。若い時からその職を続けているのだ。「私の知識がどこまで通用するのか不安だけれど、何かしら役に立っていると思って働いている」「求められている間は努力したい」と、二人の考えを聞き、何事にも前向きに取り組むことが大切だと気づかされた。


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