「不調を感じたら断食で胃腸を休めるのが僕なりの健康法。その間、摂るのは水と酵素のみ。少々の不調ならすぐに治ってしまうんです。」

《きょうだい会議》で一致団結して

僕の父(現・福岡ソフトバンクホークス監督の工藤公康さん)はプロ野球選手だったため、子どもの頃から我が家ならではのルールというか、暗黙の了解がありました。たとえば、「靴は玄関で履かない」。

父は試合を終えて遅くに帰宅した翌朝はゆっくり寝ていますが、常に緊張しているせいか、小さな物音でも目を覚ましてしまいます。長男である僕を含めて5人のきょうだいがそれぞれ玄関で靴を履いて、そのたびにドアを開け閉めすると騒々しい。父を起こさないよう、全員揃って静かにドアを開けて外で靴を履くのです。また食事のメニューも父と僕たちは違いました。

そして、父の出る試合をテレビの野球中継で観る時、父がマウンドに立って投げている間は正座をしていました。「家族がだらしない格好で観ていると、それが伝わってしまう」と思っていたんです。

僕たちきょうだいも、「生活できるのはお父さんのおかげ。皆でお父さんを応援しよう!」と一致団結。父が負けて帰ってきた日は《きょうだい会議》を開いて、「どうしたらお父さんが次の登板までに元気になるか」を話し合い、「父の隣で一緒にテレビを観る人」「お茶を運ぶ人」「お風呂を沸かす人」など、役割分担を決めていました。

これらのルールは母を中心に共有されていて、いつの間にか家族の習慣になっていたものです。父から頼まれたわけではないですし、試合に負けたからといって、不機嫌になることもなかったです。それでも、家で野球の試合を観ている父は常に張りつめた空気を身にまとっていて、近寄りがたい印象でした。子ども心に「お父さんは厳しい仕事をしているんだ」と思ったものです。

でも実は、そんな父に長年連れ添っている母がすごい。母は、20代で肝臓を悪くして早期引退を考えていた父のために栄養学を学び、現役生活を続けられるよう支えました。その結果、父は47歳までマウンドに立つことができたのですから見事です。おかげで僕たちきょうだいも丈夫で、風邪すらめったにひきません。

大人になった今も野菜中心の食事を心がけ、酵素玄米を取り入れるなど体調管理には気をつけています。料理は、蒸し器で蒸すか鍋にするかで、たいしたものは作りませんが、自粛中も母が差し入れてくれた食材で自炊していました。

日頃から、体が発する黄色信号に気づいたらすぐに対処する習慣が身についているのも、母のおかげかもしれません。不調を感じたら断食で胃腸を休めるのが僕なりの健康法。その間、摂るのは水と酵素のみ。1日で回復しない場合は、もう1日……と調整します。少々の不調ならすぐに治ってしまうんです。