「本当に意外なことでしたが、芸能界入りのチャンスを作ってくれたのは父だったんです。」

中学生の時に観た映画に心を動かされ

役者を目指すようになったのは、大学へ進学する頃です。きっかけは、「お兄ちゃんのやりたいことって、役者の仕事でも叶えられるんじゃない?」という妹の一言でした。小学校の学芸会で人に注目されることの楽しさに目覚め、プロスポーツ選手として大勢の前で活躍したいと思っていた僕は、テニスの道を諦めた時点で何をすればいいのか悩み、当時農業に関心があったので農業大学への進学を決めていました。

妹の言葉で思い出したのは、中学生の時に観た、戦艦大和の乗組員の悲劇を描いた映画『男たちの大和/YAMATO』。学校の授業だけではわからなかった戦争の残酷さをまざまざと見せつけられ、平和の尊さを知るきっかけになりました。それ以来、「この映画で心を動かされたように、僕も人が変わるきっかけを作れる人間になりたい」と思うようになったんです。

たしかに、役者は役を通してさまざまなメッセージを伝えることができる。これだ、と思いました。

当初、両親には役者になることを反対されていましたが、おそらく2人は僕の覚悟を見定めたかったのでしょう。19歳の時、僕の決意が固いことがわかると、父は「ひとりの男として世に出て行くのだから、自分の人生は自分で決めろ」と言って、僕をある場所に連れ出しました。そこは父がよく足を運ぶ飲食店で、僕も子どもの頃から連れて行ってもらっていた店。その時店長さんに、「じゃあ○日○時に来て、ここに座っていなさい。ただし声を掛けられなかったら諦めるんだよ」と言われたのです。

意味がわからないまま指定された日時に座っていると、やってきたお客さんに店長が「この子、役者さんになりたいそうですよ」と。実はその人は、現在所属している事務所の社長だったのです。後日、社長から「うちで頑張ってみますか?」と連絡をいただき、今に至ります。本当に意外なことでしたが、芸能界入りのチャンスを作ってくれたのは父だったんです。