知識と情報を集めれば、介護の負担は減らせる

【混乱期】には、家族の日常が突然変化し、誰もが戸惑い、混乱します。親が失禁する、歩けなくなった、といった現実を受け入れられないまま対応に追われる時期。自分を育て、導いてくれた親が子どものように手がかかることに腹が立ち、つい怒ってしまう。

ですが、親が「できないこと」ではなく、「できること」に目を向けましょう。洗濯ものをたたむことができるならやってもらうなど、残っている能力を活かす。そして、できたことに対しては「ありがとう」と感謝を伝えましょう。

また、親の頭がしっかりしているうちに本人の意思を聞いておくことが大事。特に「どう死にたいか」「延命治療を望むか」などは、介護が始まる前、元気なうちに話し合っておくのがベストです。親の判断能力がなくなる介護の後半では、生死に関わる判断を介護者がしなければなりません。これは非常に苦しいことであり、その判断をめぐってきょうだいや親族で揉めることも多いのです。

未経験者が介護という長い道のりを歩んでいくうえで必要なのが、「情報」と「知識」です。これも実際の介護が始まる前から蓄えるようにしましょう。情報を得る手段は市区町村の相談窓口、書籍やインターネット。そして、やはり経験者からの「生きた情報」が何よりも役立ちます。

特に【負担期】は、介護保険サービスだけでなく、ほかに利用できる「社会資源」の情報を集めることが大事。「社会資源」とは、毎日の食事の宅配や、掃除などの家事援助といった、高齢者向けに各自治体や民間団体、NPOが提供しているサービスなどです。

サービスの内容は多種多様。私が住む地域では、歯科クリニックが、咀嚼や嚥下の障害がある人向けの食品を提供しています。こうした「社会資源」を知っておけば、必要になったときに活用できる。介護の時間を削減できますし、親の生活の質の向上にもつながります。

私が代表を務めるNPOでは介護者が集うカフェを運営していますが、今は全国に情報交換の場「介護サロン」があるので、ぜひ参加してみてください。介護中は社会から孤立し、それによって疲労と絶望が深まりがちです。

孤立感を解消するには、自分の居場所をつくることがカギ。介護のつらさを知る経験者と会って話すことは癒やしにもなりますし、悩みも情報も共有できるというのは心強いものです。