年齢の壁や家族の反対を乗り越え、仕事を得ても、思うようにいかないことばかり。それでも働き続ける3人の女性を突き動かすものは。一人目は定年夫との生活に息が詰まる恵子さん(62歳)の事例です。(イラスト=タムラサチコ)
同じ労力なら、働いてお金をもらいたい
2年前、定年退職した夫から「もう働かないでのんびりしたい」と宣言された恵子さん(62歳・仮名=以下同)は、絶句した。
「義母を看取り、娘2人が結婚して家を出たばかり。やっと自分の時間を持てると喜んでいたのに」
案の定、読書しか趣味がない夫は、家に籠もりきりになってしまう。食卓を囲んでも「これ、おいしいな」「そうね」程度の会話しかない。
「仲が悪いわけではありませんが、2人でいると息が詰まって……」
しばらくして、近所に住む次女が男の子を出産。第一志望の保育園に落選したため、恵子さんの家に預けるようになった。
「可愛いけれど、毎日となるとグッタリ。食費がかさむのに、娘が払おうとしないのも不満でした。『少しくらい出してくれないの?』といたら、『親子の間で窮屈な話はやめて』と嫌な顔をされて。その時、同じ労力をかけるのなら、保育園に勤めてお金に換えようか、と思ったんです。夫と顔を合わせる時間も減らせるし」