『私はいらない人間なんだ』と自分を責めたくない
現在は企業の独身寮の調理場で働く。時給900円、朝6時から11時半までの週4日勤務。月収は8万円に下がったものの、心は穏やかだ。
「『私はいらない人間なんだ』と自分を責めるような状況になるのはもう嫌なんです。だから今の職場では、怒られないよう気をつけています」
シフトの1時間前には出勤し、準備や掃除などの雑用をすませておく。夫は「1時間タダ働きするなんて」と笑うが、「私は準備に時間がかかるから。遅くなって周りに迷惑をかけてしまうよりいい」とはね返す。
新聞の求人広告欄のチェックは今も欠かさない。さくらんぼの収穫時期に募集される農家のアルバイトなど、聡子さんの職歴は多岐に及ぶ。
「だって、何ごとも経験でしょう。働きたくても反対されて叶わなかったから、どんな仕事も新鮮だし、『勉強』だと思うと頑張れるんです」
家計は夫の厚生年金と聡子さんの国民年金、パート収入で賄われているため、貯金はなかなか増えない。職場から帰宅すると、夫はテレビを見ているかパチンコをしに外出。怒りがこみあげることもある。
「本当は、夫にも働いてほしい。でも、それを伝えれば嫌みを言われたり、怒鳴り散らされたりして面倒なので、言えません。もう諦めてます」
今、聡子さんを支えているのは、80歳を超えてなお惣菜店のパートを続ける、近所の女性の存在だ。
「私が暗い顔をしていると、『あんたなんか、私から見たら娘みたいな歳だ。まだまだこれからだよ!』と明るく言ってくれる。挨拶を交わすだけで、悩みがふっと消えていく。私も、80代になってもあんなふうに生きていたいんです」
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年齢を重ねてから新しい環境に飛び込んでいくのは、勇気がいることだ。でも、自分の限界を決めつけなければ、道は必ず拓ける。そう感じさせてくれる3人だった。