イラスト:タムラサチコ
年齢の壁や家族の反対を乗り越え、仕事を得ても、思うようにいかないことばかり。それでも働き続ける3人の女性を突き動かすものは。3人目は、夫に働くことをずっと反対され続けてきた聡子さん(65歳)の事例です。(イラスト=タムラサチコ)

夫は、私を家に縛り付けておきたかっただけ

高校卒業後、当時誰もが羨むデパートの案内嬢をしていた聡子さん(65歳・仮名)。「この仕事は若いうちしかできない」と見切りをつけ、21歳で大手食品メーカー勤務の男性と結婚。その後、3人の男の子をもうける。末っ子が小学校に入った頃、周りのママ友はみんな働いていた。私も、と焦燥感にかられたという。

「夫に働きたいと切り出したら、『うちの会社で妻を働かせているやつはいない。お前が働くと、俺が恥をかく』と却下。『息子の学校のお母さんはみんな働いてる』と食い下がっても、『どうせコンビニとかスーパーだろ? 強盗に襲われるのが関の山』とめちゃくちゃな理屈をつける。要するに夫は、私を家に縛り付けておきたかっただけなんですよ」

その後、長男が大学受験に失敗し、浪人生活を始める。山形県の自宅から仙台の予備校に通い始めたため、月の交通費だけで6万円、予備校の学費で70万円が飛んでいく。

「息子のためなら夫も動くだろう」と踏んだ聡子さんは、「私が一所懸命働く姿を見せれば、あの子も頑張ってくれると思わない?」と説得した。だが、夫は「本人の努力あるのみだ。甘やかすな!」の一点張りで、再び道は閉ざされた。