家庭ほど自分の世界を構築できる場はない

22歳でモデルとしてデビューしましたが、頃合いよく話が舞い込んできたので流れに乗ったというだけで、モデルや女優といった職業に憧れていたわけではありません。女優としてテレビドラマに出演するようになってからも、居心地が悪くて仕方がなかった。

というのも私は、指示されて動くことが大嫌いなのです。20代の頃は、他人の世界観の中でプレイヤーとして活動するのはつまらないと感じながらも、どうしたらいいのかわからず、息苦しくてたまらなかった。

当時は、深い考えもなくズルズルと歩み始めたことのツケが回ってきたのだと猛省していましたが、その一方で、経済的な自立は果たせました。自分の店を開くことができたのも、この時期に蓄えたお金があったからなので、今では良しとしています。

結婚したのは28歳のときです。結婚願望はありませんでしたが、結婚したくないというわけでもなかった。正直なところ、これで新たな道が拓けるとは思いました。といって、この人と一緒になれば楽になれるなどといった計算はゼロ。

夫(写真家の上田義彦さん)は、すでに自分の世界観を構築していたため、尊敬の念が湧いて、気づいたら結婚していたという感じ。要は感覚で結婚相手を決めたわけですが、いい人でよかった。賭けに勝ったような気分です。(笑)

結婚した翌年に長女が生まれました。子どもは好きではなかったのに、産んでみたら可愛くて。以来、赤ん坊にハマってしまい、次女、三女、長男を3年おきに出産。

授乳期は私自身が“歩く食糧”ですので、どこへ行くにも一緒で、12年間は子育てが最優先事項でした。家の中は戦場と化し、子育てってこんなに大変なのかとビックリしましたね。でも楽しかった。自分が選んだことだから。

しかも、家庭ほど自分の世界を構築できる場はないということに気づいたのです。家づくりから日常的に使う小物に至るまで、自分らしさにこだわることができるのですから。

日々の生活に忙殺されて、細かいことなんてどうでもいいという気持ちにならなかったのは、自分が大切だったからでしょう。子育てのために自分の時間を削るのは仕方がない。でも自分らしさは手放せない、美意識を貫きたいという思いだけは譲れなかった。

それを私は我慢すべきだとは思わないのです。好きなものに囲まれ、季節の花を飾り、作った料理をお気に入りの食器に盛りつける。そうやって私自身が気持ちよく暮らすことで子育てのストレスが軽減され、ひいては家族の笑顔につながるのだと確信しています。