精神的な豊かさを武器に新たなステップへ

その思いもあって、子育ての真っ最中でも、子どもたちを引き連れて中国やタイやインドネシアへ出向いては、家具や雑貨や手工芸品を買い集めていました。

ある日、私が見つけた物を多くの人に紹介できたらいいなと思いついたのです。そうなったら我慢ができなくって、32歳のとき、突発的に1ヵ月間だけ自宅を開放する形で店を始めました。

商売なんてしたことがなかったので、まさに手探り。値段づけもディスプレーも自分でしていたのです。それが「ハウス オブ ロータス」の始まりでした。闇雲に始めたことがここまできたかと、今、自分でも驚いています。

自宅で店を開いていた頃は稼げていたわけでもなかったし、出産を挟んでは休業していました。それでも今日まで続けてこられたのは、好きなことだからとしか言えません。子育てが忙しいから今は無理、と自分の感性に蓋をするのではなく、常にアンテナを張っていたのがよかったのかな、と分析しています。

何でもいいから好きなことにしがみついていないと、子育ての定年を迎えて自由な時間ができたときに、感覚を取り戻すことから始めなければなりません。ぐずぐずしているうちに機を逸してしまっては残念ですよね。

人生の節目を「楽しい時期は終わってしまった」とネガティブにとらえるのはナンセンス。実際に、歳を重ねたからこそできることがありますから。私にしても、若いときだったら今のようにはいかなかったでしょう。とんがっていたし、生意気だったし、自己主張が激しかったので(笑)。

周囲とコミュニケーションを図るために必要な柔軟性や忍耐力は、主に子育てを通して身につけたもの。精神的な豊かさを武器に、新たなステップに進まなくてはもったいないと思います。

大切なのは、精神的な成長を豊かな人生へとつなげること。これまでは家族のために生きてきたけど、これからは自分のために生きると決め、自分を解放しなければ。人生の節目は、自分らしさを取り戻すための絶好のチャンスです。

とはいえ、自分らしく生きることは簡単ではありません。こうありたいという気持ちと、世間体や社会の常識と折り合いをつけていかなくてはいけない。そのために不可欠なのは、何があっても自分を貫くぞという覚悟だと思います。

私は趣味が仕事につながりましたが、得意なことに着目するのもいいと思います。昔から料理好きが高じて料理研究家になる人がいたり、昨今では家事を通して片付けの才能に目覚めた主婦が、収納のプロに転身するといったことがあるじゃないですか。

もしもビジネスを始めたいのなら、主婦の経験しかないなどと尻込みせず、その経験があるからこそできることがあるはず、と可能性を探る努力が大切なのではないでしょうか。行動力があれば、誰でも自分の世界観を仕事に結びつけることができると思います。この私ができたのですから。

買い付けのためにモロッコへ渡航したときのひとコマ(写真提供:桐島さん)