現在発売中の『婦人公論』5月28日号で、表紙を飾っていただいている桐島かれんさん。モデルとして活躍しながら、自らの美学を詰め込んだセレクトショップ「ハウス オブ ロータス」をオープン。54歳のいまも年齢を感じさせず、しなやかに、美しく生きています。その秘訣はどこに? 2017年に登場した際に、その考え方の源を教えていただきました。現在発売中の本誌と合わせてお楽しみください

人生が80年だとして、時計に置き換えれば40歳は正午。50歳は午後3時のティータイム。華やかなナイトタイムはこれからです

働く母の姿に頼もしさを感じて

女性の人生にはさまざまな定年がありますね。子育ての定年、サラリーマン家庭なら夫の定年もひとつの節目でしょうし、親の介護を終えるという定年もあるでしょう。

私はいま、53歳。会社員なら仕事の定年を意識する頃かもしれませんが、フリーランスなのでリタイアについて考えたことはないのです。それどころか、年々忙しくなる一方です。

今年は私がプロデュースしているセレクトショップ「ハウス オブ ロータス」の直営店が二子玉川の玉川島屋にオープンし、GINZA SIXや伊勢丹新宿店でポップアップストアを展開しました。さらに9月には、買い付けのためにモロッコへ。インスタグラムをご覧になった方々からは、「かっこいいですね」なんて言っていただくのですが、当然です。いいところしか見せていませんから。(笑)

本当は大変なんですよ。今朝も息子のお弁当を作ってきましたし、夕食は毎日家族そろって食卓を囲むようにしていますし。限られた時間をどう有効に使うかで、いつも頭の中がいっぱいです。でも、状況は少しずつ変わっていきました。

4人の子どもたちは長女が23歳、末の息子が14歳になり、これが一番大きな変化ですね。やっと一人で海外へ買い付けに行けるようになり、それが嬉しくて。自由のありがたさがパワーになっているのを感じます。

私の場合、幼い頃から精神的に自立していました。何しろ母(作家の桐島洋子さん)の子育ては放任主義に徹していましたから。成績が悪くても何も言わない。ああしろこうしろと指図されたことは一度もありませんでした。

その代わり、躓いても手を差し伸べてはくれません。自分の人生なのだから思うように生きなさい、ただし自分で考えて、自分で行動を起こすしかないのよと──。嫌でも自立しますよね。(笑)

経済的に自立することの大切さも母から学びました。幼い頃、妹が犬に口を咬まれて42針も縫う大手術をしたときにも、母は待合室で原稿を書いていたそうです。その姿を見た祖母は、我が子の一大事なのに平然と仕事をしていてムッとしたと話していましたが、母にしてみれば手術代を稼ぐために必死だったのでしょう。

懸命に働く母を見て育った私は、子ども心に頼もしさを感じていました。だから自分も経済的に自立したいと思ったというより、そういう女性像しか知らずに育ったのです。