家に帰るとテレビが消えていた

20代も30代も。付き合えばもれなく私は相手に執着した。さみしさを埋めてほしかったのだと思う。そのくせ、「さみしい」という本当の気持ちは言えない。言えないけれどさみしい気持ちは埋まらないから、ふてくされたような態度をとることが多かった。

いくら相手が私をみていても、いつかは相手が私以外の誰かのところへいってしまうと信じていた。私が愛せない私を、誰かが愛するなどということはありえないと信じていた。
だから隣にいる彼が必ず私から去っていく、という心配は常に心の中にあった。心配は不安に変わり、不安は現実になった。

同棲していた彼が急に家から出て行った。

ある日、家に帰ると何だかいつもと様子が違うな、と思ってテレビをつけようとしたらテレビがなかった。あれ? と思ってうなぎの寝床タイプの2DKを見回してみたら、電化製品がほとんどなかった。あれ? と思って彼に電話してみたら、直ぐに電話に出た彼はこう言った。

「ごめん」
「テレビないけど!」
「俺が買ったから」
「うん、どこやったの?」
「ごめん、探さないでほしい、好きな人ができた、別れたい」

私はそれはそれはびっくりして、それはそれは心臓がばくばくして、絶対探す! と宣言した。彼は、「同棲してまだ○年だから」「内縁とかないんで訴えても無駄だから」みたいなことを言った。私は、戻ってきて、と泣きながら言いつつ、頭では違うことを考えていた。

なんという言われようだろう、こんなに信用のない関係しか構築してこられなかったのか。私は、絶対に人を訴えたりしないよ。

だけど私は、本当のことは、言わなかった。

電話を切って、スッと冷静になって、死んじゃおっかな〜と思った。そしたら彼と彼女は後悔するでしょう?

そんなことを思いながらビールを飲んで寝た。起きたら電化製品がなかったから、えー夢じゃなかったの? と驚いた。

32歳の頃。参加したパーティにて