23歳の頃。大学卒業後のアルバイト時代、バックパッカーで出かけたインドにて

幸せすぎて忙しいの、私

「さやかさんこんばんは、今大丈夫ですか?」
「大丈夫です〜」
「この前はありがとうございました。」
「こちらこそありがとうございました。」
「寒くなりましたよね」
「はい」
「明日はもっと寒いみたいで」
「あの〜」
「はい」
「そろそろ電話きりますね。私、幸せすぎて忙しいので」
「どういうことですか?」
「……」
「……」
「私自身もよくわからないの」

本心であるがミステリアスさを演出できたと思う。ドキドキした。その後、彼からの連絡がなくなった。しかし『ルールズ』によれば、自分から連絡してはならないわけだから、しばし待ってみた。その内、幸せすぎて忙しいの、と言ったものの本当は幸せでもなければ忙しくもないな、と思い直した。私は彼と話して幸せな気分になりたいなと思ったから自分から電話してしまった。

結局のところ、その彼と付き合うということはなかった。

私は、ルールに従ったり、すぐにルールを破ったりしながら、『ルールズ』と付き合った。

だから、『ルールズ』を実践してみて成功するのかどうかはまったくの謎である。ただ、『ルールズ』はとても面白い読み物であった。