周囲からは忠告されたけれど

騙される女の典型的なパターンだと冷笑されてもしかたない。けれど彼は、私をいわゆる不倫相手のようには扱わなかった。人目を気にせず街を歩いたし、地元のいきつけの店へも何度も行った。彼の友達にも会い、自然と2人の仲が知られていった。

周りからは「傷つくのは女のほうだから」「最終的に男は家庭を選ぶよ」と忠告を受けた。けれど、周囲の予想を裏切り彼は妻子と別居。離婚の話し合いが持たれるまでになった。ただ話し合いはこじれ、なかなかスムーズにいかない。

そうこうしながらつき合って1年が過ぎた頃、離婚が成立しないまま、私は妊娠してしまった。焦りはピークに達し、「どうするの?」とばかり言い続けていたような気がする。彼は、給料の半分近くを養育費と慰謝料に充てるという条件で離婚を成立させた。私には申し訳ないという思いより、勝利者のような達成感があった。それからは、猛反対の私の両親を説得し、半ば強引に結婚式までこぎつけた。

だが、あんなに望んだ結婚だったのに、現実は悲惨だった。ムリして支払う毎月の養育費が家計を圧迫し、生活は火の車。私は常にイライラし、仕事から帰ってくる夫をつかまえて八つ当たり。次第に理由もなしに夫をなじるようになる。

「どうしても一緒になりたいって言うから結婚してあげたのに、何でこんな思いしなきゃいけないの」。責任の半分は自分にあるのに、夫を責めてばかりの毎日だった。それでも夫に愛されていると思っていた自分は、今から思えばおめでたい人間だ。